自閉症を完治させる薬は、残念ながら今のところ見つかっていません。しかし、意思の疎通を図りやすくしたり、パニック状態を抑えたり、問題行為を改善させたりすることはできます。そのために、現在注目されている薬がオキシトシンです。オキシトシンは、脳の視床下部で合成されるホルモンの一種で、もともと子宮の収縮や母乳の分泌を促す働きがあることで知られていました。さらに、最近では、愛情や信頼の気持ちを生み出すことに大きく影響しているとされています。このオキシトシンを感情の理解が困難な知能が高い自閉症患者に投与することで、会話中に笑顔を見せるなど、他者を認識できるようになることが確認されているのです。また、コミュニケーションがとれない重度の知能障害のある患者に、オキシトシン点鼻薬を使用したところ、コミュニケーションがとれるようになったとの報告もあるそうです。とはいっても、オキシトシンがすべての自閉症の人に効果があるという保証は今のところなく、今後の研究に期待したいところです。それに、オキシトシン点鼻薬は、現在、自閉症の治療薬として日本の薬事法では認められていないため、海外から輸入して個人的に使用するしか方法はありません。一方、オキシトシン以外に、リスパダールやリタリン、ピモジドといった薬を用いることもあります。これらはうつ状態や妄想状態、強迫的症状などを抑え、神経の興奮や不安感を鎮め、療育や教育を受けやすくする目的で使用されます。これらの薬物もオキシトシン同様、すべての自閉症患者に効くとは限らず、効果も人によって異なります。自閉症患者に対する薬物療法では、薬に頼るのではなく、教育・療育をサポートすることを目的に使用するようにしたほうがいいでしょうー